4.4 選択肢の選択確率の推測方法 †
用語定義 †
- 主観的な利得表
各プレイヤーが、主観的な視点で作成した利得表である。
主観的な視点で利得表を作成しているため、作成者本人の知識や心理的要素、本人しか知り得ない隠された情報が利得表に反映される。 - 推測材料
相手の発言や相手の表情等、相手の主観的な視点を把握する際に有効と考えられる事象のことである。 - 流行
ポケモンバトルにて、ある時点で、特定のパーティや型が各プレイヤーに取り入れられていく過程のことを指す。
4.4.1 相手の意思決定の方法 †
ポケモンバトルを行うプレイヤーは、全知全能ではないため、客観的な視点ではなく主観的な視点に基づいて選択肢を選択します。
その際、下記の順番で物事を考えるはずです。
- まず、状況を把握する
- その次に、相手が選ぶ選択肢を推測する
- そして、自分の選ぶ選択肢を決定する
高い利得を得られる選択肢を選ぶためには、相手が選ぶ選択肢を推測した上で、相手が選びそうな選択肢に対して最も有効な選択肢を状況を見て判断する必要があります。
また、相手が選ぶ選択肢を推測するためには状況（どのような選択肢が存在するのか、選択肢を選んだ結果どうなるのか）を知る必要があるので、
相手が選ぶ選択肢を推測するよりも先に状況の把握を行う必要があります。
この考え方を言いかえると以下のようになります。 - 選択肢の種類と利得量を把握する
- 相手の各選択肢の選択確率を推測する
- 高い利得を得られるように選択肢を選択する
つまり、各プレイヤーは、利得表を意識していなくても、利得表で表現可能な考え方をすると言うことができます。
「4.4 選択肢の選択確率の推測方法」では、「各プレイヤーは、主観的な視点に基づき、主観的な利得表を用いて自分が選ぶ選択肢を決定する」という前提に立った上で、
相手が選ぶ選択肢を推測する方法を解説します。
以下では、主観的な視点に基づいた物事の考え方について、詳しく触れていきます。
(1)選択肢の種類と利得量を把握する †
隠された情報も考慮して利得表を作成した後、選択肢の絞り込みを行い、利得表を修正します。
「主観的な利得表」の概念上は、この結果作成される利得表は各プレイヤー間で異なってきます。
その差異を産み出す理由としては、下記のようなものがあります。
- �￣�された情報の反映
自分は「自分に関する隠された情報」を知った状態で利得表を作成しますが、相手はその情報を知らない状態で利得表を作成します。
逆に、相手は「相手に関する隠された情報」を知った状態で利得表を作成しますが、自分はその情報を知らない状態で利得表を作成します。
このことにより、両プレイヤー間で作成される利得表が異なってきます。
〜実例64〜 実例55では、相手のメタグロスの型が 「相手に関する隠された情報」となっているため、 自分は下記のような利得表を作成した。 |――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜ |自分＼相手 ｜コメットパンチ：パターン１｜ヘラクロスに交代｜ |――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜ |りゅうせいぐん ｜0.4,0.6 ｜1.0,0.0 ｜ |――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜ |ヒードランに交代｜0.9,0.1 ｜0.8,0.2 ｜ |――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜ |――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜ |自分＼相手 ｜コメットパンチ：パターン２｜じしん ｜ |――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜ |りゅうせいぐん ｜0.2,0.8 ｜0.4,0.6 ｜ |――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜ |ヒードランに交代｜0.5,0.5 ｜0.0,1.0 ｜ |――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜ |――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜ |自分＼相手 ｜コメットパンチ：パターン３｜アームハンマー ｜ |――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜ |りゅうせいぐん ｜0.3,0.7 ｜0.6,0.4 ｜ |――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜ |ヒードランに交代｜0.7,0.3 ｜0.3,0.7 ｜ |――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜ ※利得の欄には、「自分の利得,相手の利得」が入る しかし、相手は「相手に関する隠された情報」を把握しているため、 相手は下記のような利得表を作成する。 （相手のメタグロスが「アームハンマー」持ちであると仮定） |――――――――｜―――――――――――――｜―――――――｜ |自分＼相手 ｜コメットパンチ ｜アームハンマー｜ |――――――――｜―――――――――――――｜―――――――｜ |りゅうせいぐん ｜0.3,0.7 ｜0.6,0.4 ｜ |――――――――｜―――――――――――――｜―――――――｜ |ヒードランに交代｜0.7,0.3 ｜0.3,0.7 ｜ |――――――――｜―――――――――――――｜―――――――｜
多くの場合、「隠された情報」が「情報の蓄積」により双方のプレイヤー間で明らかになれば、「隠された情報」によって主観的な利得表に差異が生まれることはなくなります。
ただし、「自分（相手）に関する隠された情報」を利用して相手（自分）が「相手（自分）に関する隠された情報」を論理的に読み解くことで「情報の蓄積」が行われた場合は、
自分（相手）は「情報の蓄積」が行われたかどうかを認識することができないため、主観的な利得表の差異は解消されません。
〜実例65〜 自分の場にすばやさが153の「こだわりスカーフ」を持ったランドロスがいて 相手の場にユキノオーが居るとする。 今，ランドロスがユキノオーに先手を取った。 この時，ユキノオーはランドロスの素早さ153を越えることができないため 相手のユキノオーの持ち物が「こだわりスカーフ」であった場合， 相手はこちらのランドロスの持ち物を認識することができる。 しかし，こちらからは相手のユキノオーの持ち物が何であるかわからないため， ランドロスの持ち物が「こだわりスカーフ」であることを 相手が認識したかどうかはわからない。
- ��価値基準の差異
各プレイヤーによって、利得量に対する価値基準が異なるため、各プレイヤー間で導き出す利得量が異なってきます。
例えば、「3.2.2 ルール特有の価値基準の考慮」で述べた通り、目の前の対戦で勝利することを目的とするのか大会で勝ち残ることを目的とするのかによって、
算出される利得量は異なってきます。
また、「相手に勝つ」こととは直接関係のない目的がある場合も、
その目的が利得量に反映されるため、各プレイヤー間で導き出す利得量の違いを産み出します。
〜実例66〜 パーティ選択の場面において、 自分はカバルドンを中心にしたパーティと パルシェンを中心にしたパーティを所持しているとし、 相手はグライオンを中心としたパーティと バンギラスを中心としたパーティを所持しているとする。 自分は正確な計算を行うことができ、 ポケモンに対する愛情が利得には反映されないと仮定した場合、 自分は下記のような利得表を描くとする。 |――――――――――――｜――――――――――｜――――――――――｜ |自分＼相手 ｜グライオンパーティ ｜バンギラスパーティ ｜ |――――――――――――｜――――――――――｜――――――――――｜ |カバルドンパーティ ｜0.3,0.7 ｜0.7,0.3 ｜ |――――――――――――｜――――――――――｜――――――――――｜ |パルシェンパーティ ｜0.8,0.2 ｜0.4,0.6 ｜ |――――――――――――｜――――――――――｜――――――――――｜ ※利得の欄には、「自分の利得,相手の利得」が入る ここで、相手がグライオンに対する愛情があるとし、 その愛情を「グライオンパーティを使用する」ことで表現することによって、 0.2の利得量を得られると仮定する（※）。 相手も正確な計算が行える場合、相手は下記のような利得表を使用する。 |――――――――――――｜――――――――――｜――――――――――｜ |自分＼相手 ｜グライオンパーティ ｜バンギラスパーティ ｜ |――――――――――――｜――――――――――｜――――――――――｜ |カバルドンパーティ ｜0.3,0.9 ｜0.7,0.3 ｜ |――――――――――――｜――――――――――｜――――――――――｜ |パルシェンパーティ ｜0.8,0.4 ｜0.4,0.6 ｜ |――――――――――――｜――――――――――｜――――――――――｜ ※「グライオンに対する愛情を表現する」という目的は、 「相手に勝つ」こととは直接関係のない目的である。
- �７彁擦良埓騎里�
各プレイヤーには多かれ少なかれ知識の漏れがあるため、知識が漏れている分に関しては正確な計算を行えなくなります。
また、「3.2.1 勝率の導入」で述べたとおり、人間は複雑な計算を行うことができず、勘で計算を行う必要があるため、その意味でも正確な計算を行えなくなります。
正確な計算が行うことができないため、各プレイヤー間で導き出す利得量が異なってきます。
〜実例67〜 ポケモン選択の場面において、 自分にはカバルドンとシャワーズ対策のポケモンがいるとし、 相手にはシャワーズがいるとする。 また、自分が正確な計算を行うことができると仮定した場合、 自分は下記のような利得表を描くとする。 |――――――――――――｜――――――――｜――――――――――｜ |自分＼相手 ｜シャワーズを出す｜シャワーズを出さない｜ |――――――――――――｜――――――――｜――――――――――｜ |シャワーズ対策を出す ｜0.8,0.2 ｜0.6,0.4 ｜ |――――――――――――｜――――――――｜――――――――――｜ |シャワーズ対策を出さない｜0.5,0.5 ｜0.7,0.3 ｜ |――――――――――――｜――――――――｜――――――――――｜ ※利得の欄には、「自分の利得,相手の利得」が入る ここで、相手は、 「シャワーズの特性『うるおいボディ』は『あまごい』と使うことで カバルドンの『あくび』を無効化できる。」 と誤解しているとする。 （実際は，処理の順番が『うるおいボディの状態異常回復』の次に 『あくび状態によるねむり状態』となるので１ターンは雨中でも寝てしまう。） この場合、相手は「シャワーズを出す」という選択肢を 過大評価していると考えられるので、 相手が描く利得表は以下のようになり、 自分が描いた利得表とは異なる利得表を使用すると考えられる。 |――――――――――――｜――――――――｜――――――――――｜ |自分＼相手 ｜シャワーズを出す｜シャワーズを出さない｜ |――――――――――――｜――――――――｜――――――――――｜ |シャワーズ対策を出す ｜0.7,0.3 ｜0.6,0.4 ｜ |――――――――――――｜――――――――｜――――――――――｜ |シャワーズ対策を出さない｜0.4,0.6 ｜0.7,0.3 ｜ |――――――――――――｜――――――――｜――――――――――｜
(2)相手の各選択肢の選択確率を推測する †
相手の発言や相手の表情等、相手の主観的な視点を把握する際に有効と考えられる事象（推測材料）を基に、相手の各選択肢の選択確率を推測します。
良い判断材料を基にすることができれば、より正確に相手の各選択肢の選択確率を推測することができます。
（詳しくは後述する）
ただし、何らかの事情（推測材料を考慮する時間が無い、良い推測材料がないため相手の各選択肢の選択確率を推測するのを諦める、等）により、
このプロセスは飛ばされることがあります。
(3)高い利得を得られるように選択肢を選択する †
相手の各選択肢の選択確率を推測した場合は、「3.2.4 加重平均法の適用による選ぶべき選択肢の算出」で述べた考え方で選ぶ選択肢を決定します。
相手の各選択肢の選択確率を推測しなかった場合は、自分の癖に基づいて直感的に選択肢を選択するか、
（あまり一般的ではありませんが）ランダムで選択肢を選択するかのどちらかになります。
〜実例68〜 ポケモン選択の場面において、 自分にはサザンドラとメタグロス対策のカバルドンがいるとし、 相手にはメタグロスがいるとする。 また、自分が正確な計算を行うことができると仮定した場合、 自分は下記のような利得表を描くとする。 |――――――――――――｜――――――――――｜――――――――――｜ |自分＼相手 ｜メタグロスを出す ｜メタグロスを出さない｜ |――――――――――――｜――――――――――｜――――――――――｜ |カバルドンを出す ｜0.8,0.2 ｜0.6,0.4 ｜ |――――――――――――｜――――――――――｜――――――――――｜ |カバルドンを出さない ｜0.5,0.5 ｜0.7,0.3 ｜ |――――――――――――｜――――――――――｜――――――――――｜ ※利得の欄には、「自分の利得,相手の利得」が入る ここで、相手に「選ばれる選択肢によって利得量が大きく変動しない選択肢」 を選ぶ癖があるのであれば、相手はメタグロスを出さない。 逆に、相手に「選ばれる選択肢によって利得量が大きく変動する選択肢」 を選ぶ癖があるのであれば、相手はメタグロスを出す。
4.4.2 主観的な視点を見抜くポイント †
相手の主観的な視点は、「流行」「相手の知識」等、いくつかのポイントを押さえることで推測することができます。
主観的な視点を見抜くポイントは「4.4.1 相手の意思決定の方法」でも軽く触れていますが、ここでは詳細に解説します。
「4.4.1 相手の意思決定の方法」で解説した物事の考え方の流れに沿って、解説を行います。
(1)選択肢の種類と利得量を把握する †
- �￣�された情報の反映
隠された情報について把握する場合、「蓄積された情報と意思決定」「流行」「思い出しやすさ」を押さえることが有効です。
- 蓄積された情報と意思決定
前の場面や前のターンの履歴を見て、蓄積された情報や相手が選んだ選択肢を確認することで、相手に関する隠された情報を推測することが可能です。
〜実例69〜 こちらがウルガモスを出した次のターンで、 相手がガブリアスを交代で出したとする。 この場合、相手のガブリアスは、蝶の舞ウルガモスに強い 「こだわりスカーフ」「ストーンエッジ」持ちの型である可能性が高い。
- 流行
ポケモンバトルでは、「流行」というものが存在し、ポケモンバトルを行う時期によって、使用される確率が高いパーティ・型が異なってきます。
各プレイヤーはある時点で流行っているパーティ・型を対策しようとするので、次の時点では前の時点で流行っていたパーティ・型に強いパーティ・型が流行ります。
次の時点の流行に移る早さはプレイヤーによって異なり、
ある時点で流行っているパーティ・型に強いパーティ・型をすぐに見つけられるプレイヤーは次の時点の流行に早く移り、
それ以外のプレイヤーは先に次の時点の流行に移ったプレイヤーを参考にすることで次の流行に移ります。
流行に着目することで、相手に関する隠された情報を推測することができます。
〜実例70〜 2011年の2月ごろはカバルドンとドリュウズを組み合わせたパーティが 強いと言われており,相手はこの組み合わせを含むパーティを使うことが多かった。 （パーティ選択の場面での相手に関する隠された情報は、 上で述べたパーティである場合が多かった） そこで,この組み合わせに比較的強めの眼鏡水ロトムや， この組み合わせと相性の良いウルガモスなども多く使われるようになっていた。 しかし、2011年3月ごろに、ラッキーとグライオンを組み合わせたパーティが 上記のポケモンたちに強いとして注目されるようになり それに伴って，めざめるパワー氷とストーンエッジを持ったビリジオンや 加速バシャーモが上記のポケモンたちに比較的強いポケモンとして 注目されるようになった。
- 思い出しやすさ
人間には、記憶や想像が容易な情報を多く使い、過大に評価してしまうという特徴があります（利用可能性ヒューリスティック）。
そのため、相手がこちらの隠された情報を推測する際、記憶や想像が容易な情報（流行っている情報、有名な情報、印象的な情報等）である、と推測してくる可能性が高くなります。
- ��価値基準の差異
価値基準の差異について把握する場合、「相手の目標」「相手の目的」を押さえることが有効です。
- 相手の目標
ポケモンバトルにおいて、相手の目標を考える場合は、目の前の対戦の勝率を最大にすることだけでなく、その大会で上位進出することも考慮にいれるべきです。
また、目標に具体的な数値が掲げられている（「勝率を50%にする」「ベスト4に進出する（確率の最大化）」等）場合は、
その数値を下回る利得量は、その数値を上回る利得量の２倍感じやすいです（プロスペクト理論の効用関数）。
例えば、勝率50%を目標としているプレイヤーにとっては、勝率が目標-10%（40%）になるという悲しみは、勝率が目標+20%（70%）になるという喜びと同程度に感じます。
- 相手の目的
ポケモンバトルは対戦ゲームであるため、「相手に勝つ」ことが目的となります。
（「相手に勝つ」ことを目的としないプレイヤーは、ポケモンバトルをすることは無いでしょう）
しかし、「相手に勝つ」という目的の他に、「相手に勝つ」こととは直接関係のない目的も持っているプレイヤーも存在します。
「相手に勝つ」こととは直接関係のない目的としては、例えば以下のような目的が存在します。
（以下のような目的の内、どの目的を持っているかは、プレイヤーによって異なります）
・特定のポケモンに対する好き嫌いの表現
・相手との交流
・名声の獲得
・ある実験的な戦術のテスト
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計算の不正確さについて把握する場合、「相手の知識の程度」「人間一般に共通する利得量の誤認知」を押さえることが有効です。
- 相手の知識の程度
単純に「ポケモンの内部データに詳しい」という意味での知識だけでなく、
「事前にすばやさの計算やダメージ計算等を行い、その計算結果を記憶している」という意味での知識も見るべきポイントとなります。
事前に計算結果を記憶しているプレイヤーは、対戦中に不正確な計算を行う可能性が低くなります。
- 人間一般に共通する利得量の誤認知
人間は確率の捉え方が歪んでいるので、勘で計算を行った場合、運が絡む利得量の認識を誤ります。
人間は、「大数の法則」の考え方を少数の試行にも当てはめてしまうため、
「コイン投げをして５回連続表が出たから、次は裏だ（実際は、次の試行についても、裏が出る確率は1/2）」
という考え方をしてしまいます（ギャンブラーの誤り）。
また、人間は、 0.0 < p < 0.4 の確率は過大評価し、 0.4 < p < 1.0 の確率は過小評価します（プロスペクト理論の確率重みづけ）。
(2)相手の各選択肢の選択確率を推測する †
相手がこちら側の各選択肢の選択確率を推測しているかどうかを判断するためには、「推測材料を収集しているか否か」「推測材料を考慮する余裕があるか否か」を押さえることが有効です。
- 推測材料を収集しているか否か
相手がこちらのことをどの程度知っているのかが重要になります。
何度も話したり対戦したりしているのであれば、こちらに関する推測材料は十分に集まっていると判断するべきです。
逆に初対面の場合は、相手は、ポケモンバトルにて一般的に当てはめられる推測材料を当てはめてきたり、こちら側の各選択肢の選択確率の推測を諦めたりします。
- 推測材料を考慮する余裕があるか否か
推測材料を考慮してこちら側の各選択肢の選択確率の推測をすると、推測しない場合と比べて多くの思考を必要とするため、各場面や各ターンでの思考時間が増えます。
しかし、各場面や各ターンで制限時間が設けられている場合があります。
その制限時間内に推測材料を考慮することができない場合、相手は、
制限時間内に考慮できる範囲に推測材料を厳選したり、こちら側の各選択肢の選択確率の推測を諦めたりします。
(3)高い利得を得られるように選択肢を選択する †
相手がこちら側の各選択肢の選択確率を推測しているか否かによって、パターンが分かれてきます。
- �〜蠎蠅�こちら側の各選択肢の選択確率を推測している
この場合は、相手が主観的に決めた利得量とこちら側の各選択肢の選択確率を基に、加重平均利得が最も高くなる選択肢を選んできます。
- �∩蠎蠅�こちら側の各選択肢の選択確率を推測していない
相手が癖に基づいて直感的に選択肢を選択するパターンと、ランダムで選択肢を選択するパターンに分かれます。
乱数的な要素を産み出すもの（コンピュータで生み出した乱数、時計の秒針等）を見ていないのであれば前者のパターンです。
乱数的な要素を産み出すものを見ているのであれば、後者のパターンである可能性を考慮する必要があります。
直感的に選択肢を選択すると不利になると相手が思っているのであれば後者のパターンである可能性が高く、
そうでないのであれば（乱数的な要素を産み出すものを見ていたとしても）前者のパターンである可能性が高いです。
- 直感的に選択肢を選択する
この場合は、相手が対戦経験の中で反復学習的に身に付けた癖を見抜くことが有効です。
ポケモンバトルにおいては、一般的には（運や読みの善し悪しによる）勝率の乱高下を嫌うプレイヤーが多いため、勝率の乱高下が起こらない選択肢を直感的に選ぶプレイヤーが多いです。
例えば、「選ばれる選択肢によって利得量が大きく変動しない選択肢」と「選ばれる選択肢によって利得量が大きく変動する選択肢」があった場合、多くのプレイヤーは前者を選択します。
また、運要素によって大きく利得が変わる技もあまり使われない傾向にあります。
ただし、ポケモンバトルに慣れて熟練者になっていくにつれて、勝率の乱高下が起こる選択肢を嫌う傾向は薄れます。
勝率の乱高下を嫌うプレイヤーが多いことに気がつき、「相手は勝率の乱高下を回避する選択肢を選んでくる」という前提の下で直感的に選択肢を選ぶようになります。
更に、熟練者とばかり対戦しているプレイヤーは、熟練者がそのような読みを行うことに気がつくため、一般的に嫌われる選択肢を直感的に選ぶようになります。
- ランダムで選択肢を選択する
ランダムで選択肢を選択する目的は、相手の各選択肢の選択確率に拠らず、ある一定の加重平均利得を獲得することにあります。
相手にゲーム理論に関する十分な知識があるなら、「4.5 選択のランダム化」で述べる方法で各選択肢の選択確率を決めてきます。
しかし、相手がゲーム理論を知らないのであれば、全ての選択肢を等確率でランダムで選択する可能性が高いです。
4.4.3 推測材料の種類 †
推測材料の種類としては、主に下記のようなものがあります。
- 相手の発言や文章
相手の文章（ブログ、SNS、鑑定文等）や、相手の発言に耳を傾ければ、
相手が意識している流行や印象的だと感じている事象、価値基準、知識の程度、といった主観的な視点を築く数々のポイントを押さえることができます。
相手の発言や文章を推測材料として、相手の主観的な視点を見抜こうとすることが重要です。
- 相手が所属する集団
ポケモンバトルにおいては、仲の良いプレイヤー同士が集団を形成し、知識を共有したり、バトルの準備をお互いに手伝ったりすることがあります。
集団の中では、どうしても主観的な視点が似てきますし、集団内で独自の流行が形成されることもあります。
相手がある集団に属している場合は、同じ集団の他のプレイヤーの主観的な視点を推測材料として、相手の主観的な視点を推測することができます。
- 過去の対戦の記録
過去の対戦から得られるパーティ・型（主に種族）の使用率データは、流行を知る上で重要な推測材料となります。
また、１つ１つの対戦を細かく（ターン単位）で追っていった場合、
各プレイヤーが印象的だと感じている事象、各プレイヤーの知識の程度、各プレイヤーの直感的な選択肢の選び方等も知ることができる可能性があります。
- 蓄積された情報と意思決定
「4.4.2 主観的な視点を見抜くポイント」で述べた通り、蓄積された情報と相手の意思決定を推測材料とすることで、相手に関する隠された情報を推測することができます。
- 相手のしぐさ
バトル中の相手のしぐさも推測材料となります。
例えば、相手が慌てている様子であれば、こちら側の各選択肢の選択確率を推測する時間は相手には無いと判断することができます。また、相手が考え込んでいるようであれば、
相手にとって好ましくない状況になっている（相手に関する隠された情報は相手にとって好ましくない情報である）と判断することができます。
4.4.4 推測材料の広さ・細かさ・適切さ †
相手の主観的な視点の推測に使用した推測材料に、「広さ」「細かさ」「適切さ」が備わっていれば、
推測材料を元に推測した相手の主観的な視点と、実際の相手の主観的な視点の差は少なくなります。
(1)推測材料の広さ †
多くの種類の推測材料を集めた方が、相手の主観的な視点を多角的に分析できるようになるので、相手の主観的な視点を見誤ることが少なくなります。
また、１つの種類の推測材料を集めるにしても、なるべく多くの媒体から推測材料を集めた方が、多角的に分析する上では有利です。
（例えば、「相手の発言や文章」の推測材料を集める場合は、ブログから推測材料を集めるのではなく、サイトの掲示板や実際の会話からも推測材料を集めた方が良い）
(2)推測材料の細かさ †
推測材料が数値化された形（解釈の幅がない形）で正確に表現されていれば、推測した相手の主観的な視点と実際の相手の主観的な視点との差は少なくなります。
例えば、「ポケモンAよりポケモンBの方が多かった」という推測材料よりも、「ポケモンAは10人中4人使用、ポケモンBは10人中6人使用」という推測材料の方が正確です。
(3)推測材料の適切さ †
ある推測材料が、自分の現在・将来のバトルで想定される状況に合致していればいるほど、推測した相手の主観的な視点と実際の相手の主観的な視点との差は少なくなります。
例えば、１週間後に行われる全国大会での流行を分析する際は、全国のプレイヤーが満遍なく参加する大会の記録が適切な推測材料となります。
そのため、特定のチャットで身内で行った大会の記録よりも、インターネットで広く参加者を募った大会の記録を用いた方が適切です。
Last-modified: 2012-04-01 (日) 05:03:00 (4422d)