4.6 奇襲

用語定義

  • 奇襲
    相手の各選択肢の選択確率の偏りを利用して、自分の利得の増加を狙う戦い方である。

4.6.1 奇襲の仕組み

相手の各選択肢の選択確率が「4.5 選択のランダム化」で述べる方法で算出した各選択肢の選択確率から外れ、偏りが生じた場合、
加重平均利得が最も高くなる選択肢を選択することで、高い利得を得ることができます。
更に、相手が「選ばれる選択肢によって利得量が大きく変動する選択肢」を高確率で選択する場合は、こちらはより高い利得を得ることができます。

         利得表

自分\相手選択肢a選択肢b
選択肢A0.2,0.80.6,0.4
選択肢B0.5,0.50.4,0.6

                   ※利得の欄には、「自分の利得,相手の利得」が入る
       
ここで、相手が選択肢aを0.4の確率、選択肢bを0.6の確率で選択した場合、こちらが得られる加重平均利得は下記の計算の通り0.44となります。

 -選択肢Aを選んだ場合
  {(0.2 * 0.4) + (0.6 * 0.6)} + {(0.5 * 0.0) + (0.4 * 0.0)} = 0.44
 -選択肢Bを選んだ場合
  {(0.2 * 0.0) + (0.6 * 0.0)} + {(0.5 * 0.4) + (0.4 * 0.6)} = 0.44
 
しかし、何らかの事情で相手に各選択肢の選択確率の偏りが発生し、1.0の確率で選択肢bを選択してきた場合、
こちらは選択肢Aを選択することで、0.6の利得を得ることが可能になります。

相手の各選択肢の選択確率の大きな偏りを発見する、若しくは何らかの手段で大きく偏らせることで、高い利得を得る戦い方が「奇襲」です。

4.6.2 選択確率の偏りの発見

双方のプレイヤーが描いている主観的な利得表について、利得表上に抽出した選択肢や利得表上の利得量に差がある場合は、
その差によって、(自分の主観的な利得表から見て)相手の各選択肢の選択確率の偏りが発生することがあります。
特に、相手の主観的な利得表上でのみ抽出されていない選択肢が存在する場合は、相手の各選択肢の選択確率の偏りは大きくなるので、その偏りを利用することで「奇襲」と呼べるような高い効果を得ることができます。

〜実例71〜
ポケモン選択の場面において、
自分にはユキノオーがいて、
相手は以下の2匹どちらかを選出するとする。
 
ウルガモス
性格:ひかえめ
努力値:とくこう252 すばやさ252 HP4
技:だいもんじ むしのさざめき めざめるパワー ちょうのまい
アイテム:むしのジュエル

プテラ
性格:ようき
努力値:こうげき252 すばやさ252 とくぼう4
技:ストーンエッジ じしん こおりのキバ ステルスロック
アイテム:きあいのタスキ

また、ユキノオーは次のような型であるとする。

性格:せっかち
努力値:こうげき252 すばやさ252 とくこう4
技:ふぶき ウッドハンマー ぜったいれいど いわなだれ
アイテム:こだわりスカーフ

このユキノオーは、技「いわなだれ」によって
相手のウルガモスに先手を取って一撃で倒すことができる。
この場合、自分は下記のような利得表を描くとする。

 |――――――――――――|――――――――――|――――――――――|
 |自分\相手       |ウルガモスを出す  |プテラを出す    |
 |――――――――――――|――――――――――|――――――――――|
 |ユキノオーを出す    |0.9,0.1       |0.2,0.8       |
 |――――――――――――|――――――――――|――――――――――|
 |ユキノオーを出さない  |0.4,0.6       |0.7,0.3       |
 |――――――――――――|――――――――――|――――――――――|
 
ここで、相手は、
上記のようなユキノオーの存在を知らず、
アイテム「きあいのタスキ」を持っているだろうという予測を立てるとする。
この場合、相手は下記のような利得表を描くとする。

 |――――――――――――|――――――――――|――――――――――|
 |自分\相手       |ウルガモスを出す  |プテラを出す    |
 |――――――――――――|――――――――――|――――――――――|
 |ユキノオーを出す    |0.3,0.7       |0.8,0.2       |
 |――――――――――――|――――――――――|――――――――――|
 |ユキノオーを出さない  |0.4,0.6       |0.7,0.3       |
 |――――――――――――|――――――――――|――――――――――|

相手の利得表上は「プテラを出す」という選択肢が劣等戦略となるため、
相手は必ず「ウルガモスを出す」を選択する。
そのことをこちらが把握していれば、「ユキノオーを出す」を選択し、
相手の知識不足を突いて奇襲することで、0.9の利得を得ることができる。

また、相手がこちらの各選択肢の選択確率を推測してきていて、なおかつその推測が誤っている場合も、相手の各選択肢の選択確率の偏りが発生することがあります。
その偏りを利用して、奇襲を行うこともできます。

〜実例72〜
ポケモン選択の場面において、
自分にはユキノオーがいて、
相手は以下の2匹どちらかを選出するとする。

ウルガモス
性格:ひかえめ
努力値:とくこう252 すばやさ252 HP4
技:だいもんじ むしのさざめき めざめるパワー ちょうのまい
アイテム:むしのジュエル

プテラ
性格:ようき
努力値:こうげき252 すばやさ252 とくぼう4
技:ストーンエッジ じしん こおりのキバ ステルスロック
アイテム:きあいのタスキ

また、ユキノオーは次のような型であるとする。
 
性格:せっかち
努力値:こうげき252 すばやさ252 とくこう4 
技:ふぶき ウッドハンマー ぜったいれいど いわなだれ
アイテム:こだわりスカーフ

この場合、利得表は下記の通りであったとする。


 |――――――――――――|――――――――――|――――――――――|
 |自分\相手       |ウルガモスを出す  |プテラを出す    |
 |――――――――――――|――――――――――|――――――――――|
 |ユキノオーを出す    |0.9,0.1       |0.2,0.8       |
 |――――――――――――|――――――――――|――――――――――|
 |ユキノオーを出さない  |0.4,0.6       |0.7,0.3       |
 |――――――――――――|――――――――――|――――――――――|

ここで、相手が、「ユキノオーは必ず出てくる」
と推測している場合、相手は必ずプテラを出してくる。
(こちらが実例71の通りに行動するのであれば、ユキノオーは必ず出す)
そのことをこちらが把握していれば、ユキノオーを出さず、
相手の推測の誤りを突いて奇襲することで、0.7の利得を得ることができる。

4.6.3 選択確率を偏らせる方法

相手も、自分と同じように利得表を作成したり、推測材料を元にこちら側の各選択肢の選択確率を推測したりすることで、どの選択肢を選択するかを決めてきます。
ここで、相手の主観的な利得表の作成を誤らせたり、相手が使用する推測材料の広さ・細かさ・適切さを失わせたりすることで、
相手がこちら側にとって有利な選択肢を選択するように仕向けることができます。

具体的には、下記のような情報や推測材料を相手に提供し、信じさせることで、相手の各選択肢の選択確率を偏らせることができます。

相手の主観的な利得表の作成を誤らせる情報

  • 特定のポケモンの型や特定のポケモンの組み合わせに関する正確ではない情報を提供する
    誤った計算結果を伝える、意図的にある事象を考慮しないようにする、等
  • 特定の価値基準を強調させた情報を提供することで、勝率以外の要素を利得量に反映させる
    特定の型のポケモンに対し嫌悪感を表明しその型を使いにくくさせる、等
  • 正確ではなかったり、特定の価値基準が強調されていたりしても、反論されにくい状態で情報を提供する
    反論すべきポイントが見つかりにくい形で情報を提供する、反論する人がいない場所で情報を提供する、等

相手が使用する推測材料の広さを失わせる推測材料

  • 一つの視点から見た推測材料ばかり提供する
    過去の大会での各種族の使用率データばかり提供する、等
  • 特定の視点の推測材料を目立たせ、他の視点の推測材料を考慮させないようにする
    しぐさをする時に相手の目に触れるようにする、印象的な試合について相手に教える、等

相手が使用する推測材料の細かさを失わせる推測材料

  • 曖昧な推測材料を提供する
    種族Aの使用率が50%で種族Bの使用率が45%なのを知っているのに「種族Bより種族Aの方がかなり多かった」と伝える、等
  • 曖昧な推測材料を目立たせ、明確な推測材料を考慮させないようにする
    自分が有名であることを利用して曖昧な情報を信じさせる、等

相手が使用する推測材料の適切さを失わせる推測材料

  • 正確ではない推測材料を提供する
    自分に関する隠された情報からは考えられない選択肢を選ぶ、母集団が偏っている大会の記録を伝える、等
  • 正確ではない推測材料を目立たせ、正確な推測材料を考慮させないようにする
    不正確な点について触れずに推測材料を提供し信憑性の高い推測材料であると誤認させる、等

〜実例73〜
相手がナットレイを繰り出した次のターンで、
こちらはラティオスを繰り出すとする。

この時、相手はこのラティオスが「めざめるパワー炎」持ちであると
推測する可能性が高い。
また、実際にラティオスが「めざめるパワー炎」を持っていなかったとしても、
相手はそれを想定して行動を選択する可能性が高い。
具体的に言えば、相手のナットレイが「まもる」を使う、
「めざめるパワー炎」を回避する為に交代する、等が挙げられる。

つまり、ナットレイに対してラティオスを出す、という選択肢は、
正確ではない推測材料を相手に提供する選択肢である、と言える。
トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2013-06-21 (金) 00:52:12 (3964d)