２種類の読み

4.1 2種類の読み †

用語定義 †

情報
ある試合の中で、ゲーム上の画面から読み取れる範囲内の事柄（自分の各ポケモンの種族・各ステータス・技・持ち物・特性、相手が場に出したポケモンの種族、等）。
他の試合の結果や、ゲーム上の画面で表現できない事柄（相手の表情、相手との言語を介したやりとり等）は、ここで言う「情報」に含まれない。
隠された情報
ある試合の中で、片方のプレイヤーのみが知り得る情報のことを指す。
「自分に関する隠された情報」は、自分のみが知り得て、相手が知り得ない情報のことである。
（例えば、自分のポケモンが試合の中で一度も使用していない技は、「自分に関する隠された情報」である）
逆に、「相手に関する隠された情報」は、相手のみが知り得て、自分が知り得ない情報のことである。
情報の蓄積
双方のプレイヤーの画面のメッセージ上でポケモンの種族・技・持ち物・特性の名前が表示されること、
もしくは自分（相手）が把握している情報を利用して相手（自分）に関する隠された情報を論理的に読み解くことにより、
双方のプレイヤー間で共有される情報が増えることを指す。
「情報の蓄積」により、「隠された情報」となっていた情報が、双方のプレイヤー間にとって明らかとなる。

4.1.1 隠された情報の推測 †

「2. ポケモンバトル解析」、及び「3. 運要素の概念」では、自分も相手もお互いの情報を全て知っていることを前提として論を展開していました。
しかし、実際のポケモンバトルでは「隠された情報」が存在します。
例えば、相手のポケモンのステータスや、相手のポケモンが一度も使っていない技等は、自分のゲーム上の画面からは確認することができないので、自分から見ればそれらの情報が「隠された情報」（相手に関する隠された情報）となります。
その逆に、相手のゲーム上の画面から確認できない情報も存在するので、それらの情報も「隠された情報」（自分に関する隠された情報）となります。

双方のプレイヤーで共有される情報は、ポケモンバトルが進行するにつれて、情報が蓄積されることで増えていきます。
例えば、自分のポケモンが使用した技が画面上のメッセージに表示されれば、その時点で自分のポケモンが持っている技が双方のプレイヤー間で明らかになりますし、
画面上のメッセージに相手のポケモンの持ち物の名前が表示されれば、その時点で相手のポケモンが持っている持ち物が双方のプレイヤー間で明らかになります。
このことにより、「隠された情報」であった情報は、ポケモンバトルの進行と共に「隠された情報」ではなくなる可能性があります。

また、「相手に関する隠された情報」が何の情報であるかによって、適切な選択肢
（「4.3 選択肢の絞り込み」に述べる方法で絞り込んだ後に残る選択肢）が変わる可能性があります。
「情報の蓄積」により、「相手に関する隠された情報」が明らかになったのであれば、それに合わせて自分は適切な選択肢を選ぶ必要があります。
しかし、「相手に関する隠された情報」が「情報の蓄積」により明らかになるのを待っていたのでは、手遅れになることもあります。
（相手のポケモンの技が明らかになると同時に自分のポケモンが倒されてしまう、相手のポケモンの技・特性・持ち物等が明らかになったが相手のポケモンに対応できるポケモンを手持ちに入れていなかった、等）
その場合は、「相手に関する隠された情報」がどのような情報であるのかをあらかじめ推測し、その推測に合わせて適切な選択肢を選ぶ必要があります。

このような読みは、カードゲームで相手の手札を読むのと同じような類の読みであり、相手の手の内を知る必要があるために発生する読みです。

～実例54-1～
・「相手に関する隠された情報」の推測を怠り、手遅れになる例
  自分
　　場　：ラティオス
　　     （りゅうせいぐん，りゅうのはどう，不明，不明＠いのちのたま）
　　控え：ヒードラン
　　     （だいもんじ，不明，不明，不明＠不明）
  相手
　　場：　メタグロス
　　     （コメットパンチ，バレットパンチ，しねんのずつき，不明＠不明）
　　控え：ヘラクロス
　　     （インファイト，メガホーン，不明，不明＠こだわりハチマキ）
　
　自分の場に「りゅうせいぐん」持ちのラティオスがいて、
　相手の場に「コメットパンチ」「バレットパンチ」「しねんのずつき」
　を持っていることが判明しているメタグロスがいるとする。
　また、自分の控えにヒードランがいるとする。
　（自分の控えにヒードランがいるという情報は、共有されているとする）
　そして、ラティオスとメタグロスが１対１で戦った場合は、
　メタグロスが勝つとし、
　ヒードランがメタグロスに「だいもんじ」を使用することで
　サポートすればラティオス側が勝つとする。

　ここで、「相手に関する隠された情報」を推測しないのであれば、
　自分はヒードランを交代で出すことが適切な選択肢となる。

　しかし、相手のメタグロスが「じしん」を隠し持っていて、
　交代を読んで「じしん」を使用した場合、
　ヒードランは交代と同時に倒されてしまう。
　ヒードランが倒されてしまえば、ヒードランでラティオスをサポートすることが
　できなくなるため、立て直すことができなくなり、手遅れとなる。
　
・「相手に関する隠された情報」の推測を行う例
　上の例では、相手のメタグロスがヒードランに対して有効な技を
　所持している可能性を考慮に入れるべきである。
　具体的に言えば、「じしん」や「アームハンマー」を隠し持っている可能性を
　考慮に入れるべきである。
　相手のメタグロスが「じしん」や「アームハンマー」
　を持っていると推測できる場合は、
　メタグロスの「じしん」「アームハンマー」を読んで
　ラティオスで「りゅうせいぐん」を打つ」
　という選択肢を考慮に入れる必要がある。

なお、上記では、双方のプレイヤーの画面のメッセージ上でポケモンの種族・技・持ち物・特性の名前が表示されることによって情報が蓄積されるという単純な例のみ挙げましたが、
実際は、自分（相手）が把握している情報を利用して相手（自分）に関する隠された情報を論理的に読み解くことで情報が蓄積されることもあります。

～実例54-2～
自分の場にすばやさが123の「こだわりスカーフ」を持ったユキノオーがいて
相手の場にランドロスが居るとする。
今，ランドロスがユキノオーに先手を取った。
この時，ランドロスはユキノオーの実質の素早さ184を
「こだわりスカーフ」なしでは越えることができないため
相手のランドロスの持ち物は「こだわりスカーフ」であることが特定できる。

～実例54-3～
自分の場に防御力が134のバンギラスがいて
相手の場にメタグロスがいるとする。
今，メタグロスの「バレットパンチ」がバンギラスにあたり，
86のダメージが入った。
メタグロスの最大攻撃力205からのバレットパンチは最大ダメージが84であり，
属性強化アイテムか達人の帯などの
攻撃力を底上げするアイテムを持っていると考えられるが
このダメージからだけでは，どのアイテムを持っているかの特定ができない。

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4.1.2 選択肢の選択確率の推測 †

「2. ポケモンバトル解析」、及び「3. 運要素の概念」で解説した通り、相手の各選択肢の選択確率によって、最も加重平均利得が高くなる選択肢が変わる可能性があります。
ポケモンバトルでは、自分と相手で選択肢を選ぶタイミングが同時であり、相手が選んだ選択肢を確認してから自分の選択肢を選ぶことができないので、相手が選ぶ選択肢を読む必要があります。

このような読みは、（後出しのない）じゃんけんと同じような類の読みであり、相手が選んだ選択肢をあらかじめ確認することができないために発生する読みです。

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4.1.3 ２種類の読みを考慮した利得表 †

「隠された情報の推測」と「選択肢の選択確率の推測」の両方を考慮するのであれば、利得表を描く手順は下記のようになります。

(1)隠された情報に関して、何通りかにパターン分けを行う。
(2)パターン毎に利得表を作成する。
(3)各々のパターンの生起確率を求める。
(4)各々のパターンの生起確率を考慮し、パターン毎の利得表を１つの利得表にまとめる。

～実例55～
実例54-1の場合は、以下のようにして利得表を描く。

(1)隠された情報に関して、何通りかにパターン分けを行う。
相手のメタグロスの４つ目の技に関して、
下記のようにパターン分けすることができる。
・パターン１：ヒードランに対して有効な技を所持していない場合
・パターン２：「じしん」を所持している場合
・パターン３：「アームハンマー」を所持している場合

(2)パターン毎に利得表を作成する。
相手に「ヒードラン」に強い控えがいるとするとして、利得表を作成する。

・パターン１：ヒードランに対して有効な技を所持していない場合
　|――――――――｜―――――――｜――――――――｜
　|自分＼相手　　　｜コメットパンチ｜ヘラクロスに交代｜
　|――――――――｜―――――――｜――――――――｜
　|選択確率　　　　｜0.8　　　　　 ｜0.2　　　　　　 ｜
　|――――――――｜―――――――｜――――――――｜
　|りゅうせいぐん　｜自分の勝率0.4 ｜自分の勝率1.0 　｜
　|――――――――｜―――――――｜――――――――｜
　|ヒードランに交代｜自分の勝率0.9 ｜自分の勝率0.8 　｜
　|――――――――｜―――――――｜――――――――｜

・パターン２：「じしん」を所持している場合
　|――――――――｜―――――――｜――――――――｜
　|自分＼相手　　　｜コメットパンチ｜じしん　　  　　｜
　|――――――――｜―――――――｜――――――――｜
　|選択確率　　　　｜0.3　　　　　 ｜0.7　　　　　 　｜
　|――――――――｜―――――――｜――――――――｜
　|りゅうせいぐん　｜自分の勝率0.2 ｜自分の勝率0.4 　｜
　|――――――――｜―――――――｜――――――――｜
　|ヒードランに交代｜自分の勝率0.5 ｜自分の勝率0.0 　｜
　|――――――――｜―――――――｜――――――――｜
　
・パターン３：「アームハンマー」を所持している場合
　|――――――――｜―――――――｜――――――――｜
　|自分＼相手　　　｜コメットパンチ｜アームハンマー　｜
　|――――――――｜―――――――｜――――――――｜
　|選択確率　　　　｜0.5　　　　　 ｜0.5　　　　　 　｜
　|――――――――｜―――――――｜――――――――｜
　|りゅうせいぐん　｜自分の勝率0.3 ｜自分の勝率0.6 　｜
　|――――――――｜―――――――｜――――――――｜
　|ヒードランに交代｜自分の勝率0.7 ｜自分の勝率0.3 　｜
　|――――――――｜―――――――｜――――――――｜
　
(3)各々のパターンの生起確率を求める。
　生起確率を下記のようにおく。
・パターン１：ヒードランに対して有効な技を所持していない場合
　0.4
・パターン２：「じしん」を所持している場合
　0.1
・パターン３：「アームハンマー」を所持している場合
　0.5
　
(4)各々のパターンの生起確率を考慮し、
　パターン毎の利得表を１つの利得表にまとめる。
　②で作成した各々の利得表の「選択確率」に③で求めた値を乗じ、
　その上で一つの利得表に統合する。
　　※当サイトでは、スペースの関係で利得表を３つに分けているが、
　　　実際は１つの利得表である。
　
　|――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜
　|自分＼相手　　　｜コメットパンチ：パターン１｜ヘラクロスに交代｜
　|――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜
　|選択確率　　　　｜0.32　　　　　　　　　　　｜0.08　　　　　　｜
　|――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜
　|りゅうせいぐん　｜自分の勝率0.4　　　　　　 ｜自分の勝率1.0 　｜
　|――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜
　|ヒードランに交代｜自分の勝率0.9　　　　　　 ｜自分の勝率0.8 　｜
　|――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜
　|――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜
　|自分＼相手　　　｜コメットパンチ：パターン２｜じしん　　　　　｜
　|――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜
　|選択確率　　　　｜0.03　　　　　　　　　　　｜0.07　　　　　　｜
　|――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜
　|りゅうせいぐん　｜自分の勝率0.2　　　　　　 ｜自分の勝率0.4 　｜
　|――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜
　|ヒードランに交代｜自分の勝率0.5　　　　　　 ｜自分の勝率0.0 　｜
　|――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜
　|――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜
　|自分＼相手　　　｜コメットパンチ：パターン３｜アームハンマー　｜
　|――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜
　|選択確率　　　　｜0.25　　　　　　　　　　　｜0.25　　　　　　｜
　|――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜
　|りゅうせいぐん　｜自分の勝率0.3　　　　　　 ｜自分の勝率0.6 　｜
　|――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜
　|ヒードランに交代｜自分の勝率0.7　　　　　　 ｜自分の勝率0.3 　｜
　|――――――――｜―――――――――――――｜――――――――｜